8月
夏真っ只中、夏休みはワクワク感だけではありません。「8月」、少なくとも8月は少し落ち着いて平和について考えたいです。
さて、みなさんにおうかがいします。みなさんが初めて「戦争」を意識したのはいつの頃だったのでしょうか。
私は正直はっきりしていません。横浜で生まれ横浜で育ったものの、8月15日はだいたいにおいて母の実家である新潟にいました。お盆に祖父母から聞いた話しだったのか、仏間に掲げられた遺影だったのか、はたまた町の一斉放送で流れた黙とうの合図であったのか...。ただいずれにしても「戦争」といえば日中戦争、太平洋戦争のことを指していたのは間違いありません。
国語の教科書で覚えているのは『一つの花』。最初、ゆみこはわがままだなあ、と思っていたのが、ゆみこが成長した最後のシーンでは父はおらず、そして一面のコスモスの挿絵が...。わがままで終わる話しじゃない。先生の「花」=「命」ということばだけが今も残っています。
小学校でもう一つ忘れられないのが校長先生の話し。
「戦争が終わった後食べるものがなくて毎日お腹をすかせていた。どうにもならなくてある日アメリカ軍のところに忍び込んだ(たぶん兵舎かと思う)。するといいにおいが...。それは残飯。集めて食べた。悔しいけどおいしい。泣きながら食べた。本当に惨めだった。戦争は人の心も壊す」
という内容だったと思います。子どもながら「食べものがないってどういうこと? 残飯がおいしいってどういうこと? 心が壊れるってどういうこと? 」と疑問だらけ。とにかく戦争は怖いもの、という意識だけが残っています。
7月20日の夏休み前みことばの祭儀では、「平和」がテーマにありました。私たちはだれもが与えられたかけがえのない命、タラントンを持っています。私たちはそれらが軽んじらてしまった76年前のできごとを忘れてはいけません。私たちは、命の尊さ命について考え、さらには、私たちが持つタラントンで、全世界の人々の生きることの喜び、しあわせをつくりだすことができますよう、過ごしていきたいと思います。
2021年8月10日(火)聖ヨゼフ学園中学・高等学校 校長 多田信哉
『この世界の片隅に』映画化から5年 心に響きました...