吉野弘「祝婚歌」
30数年前、私の結婚式で、当時の生徒が朗読してくれたものです。正確にはカセットテープに録音してくれたものを流しました。校長日記にふさわしいかどうかわかりませんが、言葉について考えるとき、最初に思い出される歌です。アメリカや中国、韓国や日本、クーデターで混乱しているミャンマーでも、正しい者、もしくは自分が正しいと思っている人々の声が、あまりにも強すぎて生きづらい。声を出さない人たちの、心の声を聞き取らなければ。学校という場でも、同じです。グローバルな時代に、声を出すことの大切さを言いながらも、そうでない人たちへの配慮も忘れてはなりません。昨日、東日本大震災から10年目のプログラムがテレビで放送されていました。震災で取引先がなくってしまった零細企業が、協力し合って再生した物語を伝えていました。「ライバルから仲間になった」助け合う日常の大切さを痛感します。
祝婚歌 吉野弘
二人が仲睦まじくあるためには愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい 立派過ぎることは
長持ちしないことだと 気づいているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても 非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気づいているほうがいい
立派でありたいとか 正しくありたいとかいう 無理な緊張に色目を使わず
ゆったりゆたかに 光を浴びているほうがいい 健康で風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる
そんな日があってもいい そしてなぜ胸が熱くなるのか
黙っていてもふたりには わかるのであってほしい
アトリウムに、ヨゼフ祭の展示がされています。生徒の頑張りが作品を通して伝わってきます。ありがとう。
2013年3月12日(金)聖ヨセフ学園中学・高等学校 校長 清水勝幸