イコモス(ICOMOS)
ユネスコの諮問機関として、世界遺産登録の審査やモニタリング活動をしている国際的な非政府組織(NGO)がイコモスです。ゴールデンウィーク中の5月4日、嬉しいニュースが飛び込んでまいりました。6月24日から始まるユネスコ世界遺産委員会において、イコモスが「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を正式に推薦することが発表されました。国宝の大浦天主堂や高校の修学旅行で訪れる出津教会など12の関連遺産が含まれます。実は5年ほど前に、認証直前に申請を取り下げるという出来事がありました。イコモスは最初に提出された「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」では不充分であると判断したのです。明治時代に建造された教会群は、世界遺産としては不十分であることを指摘し、建物としての申請ではなく、潜伏キリシタンに焦点を当て、教会とそれを取り巻く集落に世界遺産としての価値を求めたのです。イコモスの指摘と指導を受けて、申請書を書き直し、今回の認定を受けることが出来ました。建物としての教会ではなく、命をかけて信仰を守ろうとした人々に価値を見いだしたのです。長崎出身の私としてはとても嬉しいのですが、一方で多くの問題も残されています。静かに信仰生活をおくりたいと思っている地元の人には、都会から押し寄せる観光客に戸惑う人も少なくありません。教会でのマナーも不安視されています。交通機関や宿泊施設、駐車場やトイレなどの具体的な受け入れ態勢もこれからです。せっかくの世界遺産登録です。多くの人が過去の歴史と文化に触れ、未来への喜びとなりますように。
2018年5月7日(月)聖ヨゼフ学園中学・高等学校 校長 清水勝幸
世界遺産となる出津(しゅつ)教会。フランス人のド・ロ神父様が建てられました。
遠藤周作の「沈黙」は、出津教会と外海地区の潜伏キリシタンをモデルにしたとされています。