視線

 先日、2月10日の水曜日、教会暦では灰の水曜日とされ、この日から四旬節が始まります。およそ2千年前、イエスは神様の福音を宣教する前に荒れ野で40日間の断食をし、悪魔の誘惑を退けられました。そのことから今では復活祭の準備として、四旬節(40日間の意)を祈りのうちに過ごします。その灰の水曜日、夜7時のミサに与りました。ミサの中で「灰の式」が執り行われます。一年前の枝の主日(復活祭の1週間前)にいただいた棕櫚の枝を燃やして灰を作り、神父様から一人ひとり頭に灰をかけていただきます。自らの罪を回心し、復活祭を迎えるために、死と悔い改めの象徴としての灰をかぶるのです。(以前は灰かぶりとも呼ばれていました。)頭と言ってもおでこに灰のしるしを受けるのですが、どれくらいついているか自分では見えません。ミサの後一時間ほど電車に乗って帰るわけですからちゃんと確認すればよかったのに、ミサに与った喜び(満足感)と知人たちとの再会にそんなことは気にもせず帰宅しました。「ただいま」。すかさず妻が「それで帰って来たの」。「何か」?と私。「おでこ」と妻。洗面所の鏡には、輝くおでこにしっかりと灰が残っている私の顔が。電車で吊革につかまって私の前に立っていた男性の視線、不思議そうな微笑みの意味が分かりました。

2016年2月12日 聖ヨゼフ学園中学高等学校 校長 清水勝幸

教皇フランシスコから灰を受ける司祭(ヴァチカン放送より)

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