出会い、「串田孫一」
高校生の頃、図書室にあった一冊の本(雑誌)が最初の出会いでした。見開きの右側に花や鳥の美しい写真があり、その横に短いエッセイが書かれていました。非常に安価で、小さな月刊誌でしたが、串田孫一の文章に衝撃を受けたことを憶えています。写真の解説でなく、その写真が伝えようとするメッセージを、独特の透明感のあることばで綴っていました。ただ、哲学者でもある彼の文章には独特の癖(特徴)があり、文章の中に2~3の難しい漢字と、思索を必要とする言いまわしが含まれているのです。たとえば、「暁を呼ぶ声」の一節は次のようになっています。
「昨日の午過ぎから穏やかに晴れたのが嬉しくて、夜は空の星々をたっぷり眺めた。古くからの星座はそれとして、嘗て気儘に楽しんだように、自分一人の新しい星座を思い描いているうちに夜が更けていった。」
登山家としても有名な串田孫一ならではの文章です。一冊の本との出会い、作家との出会い。あれから40年近くがすぎました。生徒の皆さんにも良い出会いがありますように。
2016年2月12日 聖ヨゼフ学園中学・高等学校 校長 清水勝幸
図書館には3冊の作品がありました。 平成23年出版 「鳥と花の贈りもの」